2013年12月22日日曜日

サネカズラ

サネカズラ Kadsura japonica (L.) Dunal 
(マツブサ科 SCHISANDRACEAE)

サネカズラ
 低山の秋も深まり、下草や落葉の低木が葉を落とす時期になると、濃い緑の葉をつけたつる植物が目立つようになってくる。そのつるをたどると、真っ赤な赤い実をつけていることがある。

サネカズラの実。たくさんの果実が球状に集まる。

 このつる植物はサネカズラ。ビナンカズラと言った方が知ってる人は多いかもしれない。このつるをいくつかに切って水につけておくと、粘液が出て来て水がとろとろのスライム状になる。これを昔の人は、男性の整髪料に用いたらしい。そのことから「美男葛」とよばれたらしい。

 この天然のスライムは、自然観察会では子供ウケが抜群にいいらしいのだが、先日の保育園児対象でおこなったときは、さすがに12月なのでやめた・・・寒いもん・・・ 

カラスザンショウ

カラスザンショウ Zanthoxylum ailanthoides Siebold et Zucc. 
(ミカン科 RUTACEAE)


カラスザンショウの子供の木。
 先日、保育園で自然観察会をした時、匂いのする木として子供たちににおいを嗅いでもらった。その前にクサギなんかでさんざん臭い思いをさせてたので、「さわやか〜」と言う感想が聞けた。

 カラスザンショウと言う名前、さわやかに感じる匂いから分かるとおり、これはサンショウの仲間。サンショウといえば香りのよい植物で、食用に利用される。若い葉はお吸い物なんかについてくる「木の芽」、若い実は砂糖と醤油などで煮て「山椒の佃煮」、鰻の蒲焼きにかける「(粉)山椒」は熟した実の皮を乾燥して粉末にしたもの、といった具合。しかし、カラスザンショウの場合、香り成分が違うのか、あまり食べたいという気を起こさせる匂いではない。
 葉の形はサンショウと同じような構造で、小さな葉が行儀よく鳥の羽根のようにならんで一枚の葉を形作っている(羽状複葉)。しかし、大きさが違う。「木の芽」はせいぜい10cmもあれば大きいと感じてしまうが、カラスザンショウの葉は50cmをゆうに超える。木の高さも、サンショウではせいぜい3mくらいだが、カラスザンショウは15mくらいの高木になる。

 カラスザンショウは、森林であったところが伐採、崩壊、倒木等によって開けた場所にいち早く入り込んで成長するため、先駆植物と呼ばれる。そんな場所では、上の写真のような子供の木をたくさん見ることができる。森が傷ついた場所で素早く成長し、森の傷を塞ぐ役目を担っているようです。

 
カラスザンショウの花を訪れたクロアゲハ(?)
 カラスザンショウはミカン科なので、アゲハチョウの幼虫の食べ物になるようです。写真のクロアゲハ(?)は、蜜を吸いにきた?卵を産みにきた?


2013年12月20日金曜日

これも臭い?ハマクサギ

ハマクサギ Premna microphylla Turcz. 
(クマツヅラ科 VERBENACEAE)

 前回に続き臭そうな名前「ハマクサギ」
ハマクサギの葉
 葉の縁が波打つようなギザギザになる。ギザギザないときもあるけど。野山を歩いていてこの木に引っかかったり、すれたりするとにおいがつんと鼻をつく。やっぱり臭いのね。名前はハマクサギ。海辺に近いところに生える臭い木なので「浜臭木」。でも熊本市内では、海辺といわず低山のあちこちで結構見かける。

 このハマクサギ、臭い臭いというけれど、臭いのは最初に触れた時だけな気がする。というのも、葉をちぎったその時は「くさっ」と思うんだけど、その後ちぎった葉を揉んでにおってみても「そんなに臭くはないなあ」と感じることが何度かあったから。鼻が慣れただけなのか、においをだす条件があるのか・・・?

 ハマクサギは、前回のクサギと同じクマツヅラ科だけど、こちらの花はあまり目立たない。
ハマクサギの花
 薄い黄色で長さは1cmもない。でもクサギと同様、花びらの根元は筒状につながった合弁花。とてもかわいらしい感じの花だ。
 実は・・・あれ?見たことない・・・探してみよう。

臭い?クサギ

クサギ Clerodendrum trichotomum Thunb. 
(クマツヅラ科 VERBENACEAE)

 秋になると、野山のあちこちに色とりどりな果実が実りだす。中でも鮮やかなのがこれ。赤い星に青い真珠?色鮮やかなのは、実を食べ、種子を運んでくれる鳥へのアピールか?
クサギの実
 これはクサギの実。クサギの名は・・・音から想像される通り・・・臭い木だから「臭木」。葉をちぎって揉んだりすると、確かに臭いですわ。でもこれを自然観察会で子供にかがせた時、「ピーナッツのにおい!」という感想が出た。子供の発想もすごいし、「そうかも」と思って嗅ぐとそんな気がしてくるから、人間の感覚って不思議?
 さっきから臭い臭いと書いてますが、実は山菜として利用されている。水にさらしてにおいを抜くらしい。誰か作ってくれんかな。

 クサギの名誉挽回ではないが、花は結構綺麗。
クサギの花
 果実の時期に赤い星になってた部分は「萼(がく)」。花のころはまだ閉じてるみたい。白い花びらは5枚に見えるけど、根元はつながってて筒になっている。アサガオの花と同じような構造で、こんな形の花を「合弁花(ごうべんか)」という。おしべは4本で先に紫色の葯(花粉がつまった袋)がある。めしべは1本。

 野山で出会ったらにおいをかいでみよう。何のにおいかな?

2013年12月15日日曜日

クチナシ

クチナシ Gardenia jasminoides Ellis 
(アカネ科 RUBIACEAE)


 この季節になると、野山のあちこち、そして人家の庭でもこんな実を見るようになる。料理をする人にはすぐわかる。栗の甘露煮やサツマイモを煮てきんとんを作る時にこの実を一つ二つ入れると綺麗な黄色に仕上がる。乾燥したものが販売されている。
 この実の形は子供たちにとってはインパクトのあるもののようで、なかなかに受けが良かった。中の色鮮やかさも驚かされる。

 花は6月頃に咲く。もともとそれほど高くはならない低木なので、実も花も間近で見ることができる。


 花は、大きく純白で美しい。そして、顔を近づけると良い香りがする。

 クチナシの学名に含まれる“jasminoides”は、ラテン語の“jasminum”「モクセイ科ソケイ属」+“oides”という形の形容詞で、「モクセイ科ソケイ属の植物のような、モクセイ科ソケイ属の植物に似た」と言う意味。で、モクセイ科ソケイ属の植物って何かというと、よい香りのするジャスミンの仲間。よい香りにちなんだ学名なんでしょうね。

2013年11月1日金曜日

オニバス

オニバス Euryale ferox Salisb.
(スイレン科 NYMPHAEACEAE)
開花中のオニバス
 10年以上前の写真が出て来た。開花中のオニバス。大きな葉をつけ、全体トゲに覆われているのでこんな名なのだろう。
 名前に“おに”とかついて厳つい感じだが、冬にはかれてしまう一年草。毎年水中に落ちた種が発芽し、花を咲かせ、種子を作るというサイクルが回っている。種子は休眠性がたかく、何年も水底の泥の中で眠り続けた後、発芽することもあるらしい。しかし、そうであっても、毎年のサイクルが繰り返され、水底に発芽予備軍となる種子が供給され続けないと、生き残っていくのは難しいのだろう。

 このオニバスをずーっと観察されている方に最近お会いして、このオニバスの話題が出た。ここ数年発生しておらず、ほぼ絶滅したと見られるとのことだった。水底の発芽予備軍の種子がなくなってしまったのか、未だ眠り続けている種子があるのか・・・後者であることを祈っている。

アオウキクサ

アオウキクサ Lemna aoukikusa Beppu et Murata
(ウキクサ科 LEMNACEAE)
水面を覆うアオウキクサ
これで立派な大人の植物と言うのが面白い。しかも花を咲かせてタネを作る種子植物。
最近、植物園でウキクサの仲間の花が咲いたと言うニュースがあった。
肉眼で見えませんが…世界最小の花咲いた 茨城の植物園(朝日新聞)

ウキクサの仲間の葉を食べて育つゾウムシもいるらしいのでそちらも見てみたい。


クロテンツキ

クロテンツキ Fimbristylis diphylloides Makino
(カヤツリグサ科 CYPERACEAE)
クロテンツキの花
 更新しようと思いつつなかなかしなくて、いつの間にかブログ用の画像でデスクトップが埋まっていたので、ようやく重い腰を・・・

 秋と言えばテンツキ〜って、もう時期すぎかけてるけど。テンツキの名は、高く天を突くように伸びるから「天突き」だとか、写真のようにたまご型〜円形の花の集まりが点々と着くから「点着き」だとか説があるもよう。

 こいつらは、草全体より果実を見る方が面白いと思う。でもルーペ必須。悩ましいところ・・・

2013年8月16日金曜日

キアゲハ

キアゲハ Papilio machaon Linnaeus, 1758
(アゲハチョウ科 PAPILIONIDAE)
ミツバにつかまるキアゲハの5齢幼虫
 吸い物の薬味にでもなればと山でミツバを掘ってきた庭に植えた。しばらくして見るとミツバは丸坊主、花も食われてる。食べた主を捜すと、まぁ立派なイモムシさんが・・・

 キアゲハの幼虫。ミツバだけでなくセリ科植物を広く食草としている。先日は、耕作されずに水がたまった水田に生えてたセリについていた。同じセリ科のニンジンやパセリも食べるそうなので、農家さんにとっては嫌なチョウかも。以前、庭に植えてたパセリも丸坊主にされて枯れた。その時は食べた主はとうにどっかに行ってしまってたけど、やはりキアゲハだったんだろうな。

 しばらくしたらさなぎになってて、その後無事に羽化した。
羽化後、羽の展開を持つキアゲハ成虫。
残念ながら羽化の瞬間は見れず。羽化しそうな頃合いは毎日確認してたんだけど、ある日の朝、見てみたらもうこの状態。早い時間に羽化したみたい。

2013年8月5日月曜日

ウルシ

ウルシ
Toxicodendron vernicifluum (Stokes) F.A.Barkley
(ウルシ科 ANACARDIACEAE)
ウルシの葉と実。熊本県宇城市豊野で撮影。
 植物の葉というものもいろいろ形がある。桜餅を包む桜の葉のように、ぴら〜んとしたあれで一枚の葉の時もあれば、上の写真のようにたくさんの葉が集まっているように見えてそれが一枚の葉である時もある。前者を単葉(たんよう)といい、後者を複葉(ふくよう)という。身近な環境、例えば平地や低山で見られる樹木のうち、写真のように小さな葉が鳥の羽状に並んで一つの葉になっている羽状複葉(うじょうふくよう)の葉を持つものは、ウルシの仲間であることが多いので、かぶれやすい人は注意した方がよい。例えばハゼとかヤマハゼとか。
 さて、写真の木、見つけた時は、ヤマウルシ Toxicodendron trichocarpum (Miq.) Kuntze かなぁ、と思って見上げていたんだけど、実の表面がツルンとしてて、毛がない。となるとウルシだなぁ・・・と。ウルシは中国辺りの原産で、日本には自生していない。基本的に漆塗りの行われる地域で栽培されている樹木と考えて良いようだ。
 ただ、熊本県では漆塗りの工芸品、いわゆる漆器ってほとんど聞かない。ただ、それでも調べてみると熊本県にも漆器はあったようだ。それは、私たちが漆器と聞いて想像するような芸術的なものではなく、あくまでも生活道具として使われた質素で丈夫なものだったようである。
熊本市南区の富合公民館内の郷土資料展示室収蔵の「榎津塗」
 現在の八代市東陽町の川俣と呼ばれるあたりで生活道具としての漆器が生産されていて、そこから周辺地域に広がっていったらしい。写真は、熊本市南区の富合公民館内にある郷土資料展示室に展示されている「榎津塗」。これも、そういった地域の人々の生活道具としての漆器生産の一つだったのだろう。私なんかは真っ黒で金で花や鳥の蒔絵があるようなものを漆器と思っていたのだが、これは木目を生かすような透明感のある塗りで、蒔絵なんて施されていない。
 写真のウルシは、かつて漆器を塗るための漆を集めるために植えられていた木の子供ではないだろうか。漆は幹の直径が30cmほどにもなるらしいが、この木は私の手首ほどの太さしかない若い木だった。大きく育ってほしいと思うのだが、かぶれやすい人はいやだろうな・・・

2013年6月1日土曜日

ヒメウラジロ

ヒメウラジロ
Cheilanthes argentea (S.G.Gmel.) Kunze
(ホウライシダ科 ADIANTACEAE)

ヒメウラジロ
 シダの調査・観察に連れて行ってもらって教えてもらった。ヒメウラジロというシダ植物。最初見たとき、なんだかウサギっぽいな、と感じたけど、なぜだろう。

ヒメウラジロの葉の裏。白い。
 葉をひっくり返してみるとこの通り、まっ白。でも、お正月飾りのウラジロ(ウラジロ科)とは異なるグループで、ようは葉の裏が白いから似たような名前になったと。

 減りつつある植物の一つで環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類に選定されている。私のいる熊本県では、「要注目種」ということになっている。

 要注目種とは「現在必ずしも絶滅危惧のカテゴリーに属しないが、存続基盤が今後変化および減少することにより、容易に絶滅危惧に移行し得る可能性が高い種」だそうな。

 ここに上げている写真の生育場所は、道路を通すために切り開いて出来た斜面(法面)に、崩落防止のためにコンクリートを打って、金網を張った場所なんですね。コンクリートのヒビや隙間、くぼみに土がたまった所に生えています。日当りのよい崖や岩に生え、乾燥にも強い植物出そうなので、こんな場所にも生えてくるんだろう。たくましいといえばたくましいけどねぇ。

 こんな場所は、崩落の危険が高まったり、道路拡張なんかがあると、あっさり壊されてしまう。主な生育地が、こんな人の手が入るようなところばかりだったら、「存続基盤が今後変化および減少する」可能性が高くなるのもうなずける。観察会なんかで、希少性という切り口だけでなく、自然との関わり方を考えるきっかけとして紹介することもありだな。

 ただ、園芸目的の採集なんかもあるようで、ちょっと注意も必要だな。

 スマホのカメラなんでいまいち写真がよくない。申し訳ない・・・ 

2013年2月11日月曜日

クロヘリアメフラシ

クロヘリアメフラシ
Aplysia parvula Guilding in Morch, 1863

クロヘリアメフラシ。2013年天草にて。

暦の上では春とはいえ、まだまだ寒い中、海へ行ってきた。ワカメ取りに・・・まだちょっと早かったね〜。その上、潮をテキトーに読んできてたので、あまり引かずワカメのところまで行けなかった・・・一応、大潮の干潮言ったんだけどね。

ということで、磯遊びになってしまったのだが、そこで長男が見つけてきたもの。アメフラシだけど、なんか違う。手のひらに収まるくらいに小さく、全体に赤っぽくて模様が少ない、つついたときにだす紫の汁もやや赤っぽいかなぁ?

よくわかんないので、ネットを徘徊して絵合わせ。おそらく、クロヘリアメフラシ。
(参考先)
ウミウシ図鑑.com
http://www.umiushi-zukan.com/main/top.php
 クロヘリアメフラシのページ

千葉の県立博物館デジタルミュージアム
http://www.chiba-muse.or.jp/DM/index.php
 クロヘリアメフラシのページ

軟体動物門というグループなので、大ざっぱに言えば貝やタコ・イカの仲間。さらに、この軟体動物門の中では腹足綱というグループに入るので、巻き貝(サザエとかタニシとかカタツムリとか)に近い仲間。でも、アメフラシの仲間の貝殻は、小さく退化して隠れてしまっている。背中を押すと、コリコリッと貝殻の感触がある。写真は、波の加減でうまく背中の貝殻が現れたところ。

写真を見て気づいたけど、尾(右下の端)はどうしたのかな?怪我?現地で気付けばよく見たんだけどな・・・

アメフラシって意外と種類があるのね。知らなかった。